次の日から建設会社との打ち合わせが始まりました。
私たちには前もって決めていたことがありました。最初に数社建設会社を選んでおいて、お互いに秘密にし、絶対に接触させない。相見積もりを取ってその中から建設会社を選ぶ。談合を絶対に避ける。
これは大変な仕事です。各社に同じ説明を何回もしなければいけないのですから。
最初の打ち合わせは散々なものでした。
「日本では消防法があるからその材料は使えない。その材料も使えない。それは建築法で認められていない。それは何メートル以内でなければいけない。そこにはこれを使わなければいけない決まりがある。そんなやり方できるわけない。もしやるとしても莫大な費用がかかる。本当に払えるんですか?」
立ちはだかる法律の壁。決り。決り。決り。
海外で認められているものがどうして日本では認められていないのか。
世界基準にしなければどんどん日本は世界から取り残されていく。
海外では簡単で安くできるものがどうして日本では作ることができないのか。世界とのデザインの差は日本の法律に問題があったのか。
「斉宮さん、あなたのやり方は間違っています。まず、最初に日本の建築家を決めてその方が海外の建築家とのやり取りをする。建設会社の選考から、海外の建築家のデザインを日本の法律にあった方法や材料に落とし込みをする。そうすればわざわざ海外から建築家を呼ばなくても済むし、全部こちらでできる。そのほうが安上がりだ。」
あたかもあなたは何も知らないというように。
確かのそのとおりだと思う。手間もかかるし、コストもかかる。
でも僕はラヒムを信じてみようと思った。
「ラヒムだってはじめて日本に来たわけだから、日本の方法がわかるはずがないし、私たちだって何も知らないのだから。でも今までと同じ方法論を取っていたら、今までと同じものしかできないし、果たして本当に革新的なものはできるのか」
立ちはだかる多くの壁!
果たして本当にできるのだろうか。
殆ど赤子のように扱われ、鼻で笑われているのを感じた。
「絶対に変えない。絶対にやりぬく」
なんとか、次回来日のときに見積もりを出してもらうように取り決めることができました。 |